第8回 精米の原点「水車」を訪ねて

 11月も半ばに入り、本当に暑かった今年の夏の記憶も薄れ、ようやく本格的な秋を迎えています。作物にとっては「実りの秋」、そこここで新物が出回り何かしら充実感を覚えます。おいしい新米のご飯と、根野菜の煮物、漬物、そして秋刀魚。いいですね!野菜にしろ、魚にしろ、本当に食べ物がおいしいこの季節です。

 さて、今回は、本格的な紅葉をひかえるこの時期に、皆さんに本物の水車と精米現場をご紹介したく、とある山里を訪れました。場所は、佐賀県三養基郡基山町小松というところです。国道から外れ、山手の方へ向かうと、ゆったりとした上りになります。なだらかな傾斜面に整然と田畑が敷き詰められ、のどかな山村の風景が広がります。所々木々が色付きここを訪れる人の心を和ませてくれます。
 この地区には「つつじ寺」の異名で名をはせる大興善寺があり、春は観光客で賑わいます。今日は、晴天にも恵まれ、ここにいるだけで心が癒されます。

 目的地の「水車とうせい施設」に到着した時には、すでに大きな水車は「バシャッ!バシャッ!」と水音を立てて仕事を始めていました。

 それにつながる水車小屋では「コットン!コットン!」と勢いよく杵が石臼に振り下ろされています。電気もガソリンもなくて、川の水の力だけで小さな工場が回っています。
 燃料不要、無公害、世界一環境にやさしい工場です!

  今日は、11月24日に催される「水車祭り」の準備でお忙しいところ、この水車を管理されている中川さんにお話を伺いました。
 この水車はもう故人となられた筑後の水車大工の中村さんが製作されたもので、中川さんもこの方から水車のことを学んだそうです。

中川さんは養鶏や農業をされる傍らこの搗精施設で米を搗いたり、水車の手入れをされたりしているそうです。施設自体は、基山町役場が、風向明媚で農作物豊かなこの町の象徴として作ったものだということです。
 だからといってお飾りではありません。バリバリの現役です。

  この日も中川さんは、「二連のうちの1つの水車の修理がやっと完了し、あと10年は大丈夫です。」とおっしゃっていました。

 町営で営利目的ではないので、気の毒なくらいの低料金でお米を搗いてくれます。ありがたいですね!

  さらに、水車の仕組みについて説明していただきました。水車は水の引き方で大きく三通りほどあるそうですが、ここの水車は「上掛式」といって水を上から当てて水車を回す方式のものだそうです(他は、下掛式、胸掛式)。

大きな輪に仕切りを作り、次々にその枡に流れてくる水を溜め込み、その重みで回転していく仕組みになっています。これで得た動力はこれまた木で作られた歯車や軸に伝えられ、5本の杵を上下させます。そのリズムは一定で4時間ほどで1俵(60kg)を搗きあげるそうです。
 杵の下にはそれぞれ石臼が座っています。水車大工は、米をうまく搗くために、水車の規模、杵の重さ石臼の容量など、微妙なバランスを考えながら、作るそうです。  ここの杵の重さは2kgとのこと。石臼の直径は45cmほどでしょうか。一臼に10kgの玄米がちょうどいいそうです。それ以上多いと「搗き」が浅くなり、少ないと衝撃が強過ぎ米が割れるそうです。昔の人の知恵は素晴しいですね。

 しかし、不思議なのは、ただ杵を落とすだけなのに臼の中の玄米がムラなく搗けていくことです。玄米が、振動でなめらかな傾斜のある臼の中で、少しずつ循環しているのです。

 おや?臼の中になにやら入っています。
 中川さんに尋ねると、これは米が臼の中でうまく回転するためのもので、昔はワラで編んだものを使用していたそうです。これがなくても大丈夫だということです。

 搗き終わると、石臼から糠まみれの米を取り出します。
 見事です!何か暖かい、ありがたいものを感じます。おいしそうにも感じます。
 まさに自然と人間の知恵と時間が織り成す1つの作品です。

  さらにふるいにかけます。これだけでおしまい。

 中川さんによりますと、「スーパーなどで販売されている米のように糠はきちんとは取れていません。石抜きの機械もありませんから、利用していただく方にはそのことを理解して精米させてもらっています。」

すべて昔のままです。なんかほのぼのとした空気が流れます。

 私はここを訪れて一つ取り戻したものがあるような気がします。

ここで見た景色と自然の営み、それを利用し、生きる人々、労働があり、生活がある。「食」と「農」が隣り合っています。できた製品は、土のついた大根ならぬ、糠のしっかりついた米。
「この米」を通して、この米育てた人、水車を作った人、それらを伝える人、この米に携わった人々の思いや費やした「手間」「ひま」が垣間見えます。  この米を炊いて食べる誰でもが「いただきます」という言葉が自然と口をついて出てくることでしょう。感謝!

第1回 日本人とお米
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第4回 “「ご飯は太る」は嘘”だそうです!
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第6回 カロリーにこだわる!
第7回 ファーストフードの裏側
第8回 精米の原点「水車」を訪ねて
第9回 「食」は運命を左右する
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