第3回 マクロビオティックを再認識

今年80歳になられた久司先生は足取り軽く壇上に上がり、声も若々しく、こう切り出しました。
「皆さん、こんにちは。さすが、ここは博多、あごの張った方が多いですねえ。」
私も張ってないほうではありません。その瞬間、
「なるほど。食べ物のおいしい博多、ここに集まっている方々は
皆さん健康に留意している方ばかり、日ごろからよく噛んで食べていますね。」
と私は勝手に「良し!」と解釈したのでした 。

しかし、次の瞬間、先生からの予期せぬ視点からの指摘がありました。 先生いわく、「魚の卵の食べすぎです。」愕然。
なるほど博多か。やられました。先生は人相学にも長けていらっしゃるようです。
講演中もこのようなユーモアと信念に満ち溢れた指摘がたくさんありました。めがねも掛けず、プロジェクターで映し出された資料や情報(英語)を指し示しながら現状の抱える問題(戦争や環境問題など多岐にわたる)、食の重要性を会場の人々に説きました。
時々ジョークを交え、さりげなく食の重要性を語るのでした。
最初から最後までもう一度聞きなおしたいと思うほど大変学ぶべきことの多い内容でした。

いくつかご紹介しましょう。
まずはじめは「代替医学」に関する話でした。
(「代替医学」とは、「補完医学」とも呼ばれますが、一般のいわゆる「西洋医学」に対立するもので、具体的には鍼灸、指圧、気功等の中国医学、免疫療法、健康食品、ハーブ療法、アロマセラピー、食事療法、温泉治療などが含まれます。)
今やアメリカでは、症状に対しての治療をする対処療法的な処置が中心の近代医学は根本的な原因を正さないので不十分であり、それに替わる医学研究が盛んに進めてられているということです。
その中の 1 つの研究対象が、ハーバード大学などが進めるマクロビオティックなのです。
病気を治療する前に、病気にならないようにするのがマクロビオティックですし、仮に病気になったとしても進行を阻止したり治癒させたりすることができるのがマクロビオティックです。医療負担という経済面を考えても大変意義ある取り組みなのでしょう。
なんと、現在アメリカの医療の 45 %が近代医学によるもので残り 55 %が代替医学による治療になってきているのだそうです。
この流れに伴ってマクロビオティックの店が世界中で拡大傾向にあるということです。

世界各国の食事の指針紹介し、最後にマクロビオティックの掲げる食事ガイドライン「グレートライフピラミッド(温帯地方の人のために)」(図1)について一つ一つ説明してくれました。
「日常の食事の 40 〜 60 %は穀物から摂りたい。しかもホール(丸ごと)で、水で炊くのが一番よい。次は麺類。粉にしてベークするのは最も劣った食べ方。」
(言い方きついですねえ。)
「次に食事の 20 〜 30 %は野菜で摂取したい。日本は野菜料理に最も優れている。漬物も最高。」
「次に豆類や海草で 10 %摂取。特に豆腐や納豆などの発酵食品は大変素晴しい。海藻は日本人が最もよく食べる。欧米人の 95 %は一生海藻を食べない。英語では海藻のことを‘ seaweed '(海の雑草)と言われていたが、今では‘ sea vegetable '(海の野菜)と言われている。」
(「一生海藻を食べない」…これには驚き!わかめや昆布などダシや味噌汁の具に当たり前のように使う日本人にとっては信じられないことですよね。)


図1

「ごま塩や梅干は縄文時代からある伝統食です。ごま塩はインカ文明においてもとうもろこしにかけて食べられました。」
(玄米にごま塩とたくあん、私は好きです)
「週に数回ほどなら魚も食べてよいでしょう。赤身や青魚の油はよくありません。食べるのなら白身魚。エビやカニなどの甲殻類はコレステロールが多く、体が硬くなる。動物の肉も同様。」
(これは辛い。年をとって腰が曲がるのはエビの食べすぎだそうです。文字通りエビのようになるのだそうです。本当ですか、先生?)
「卵はすい臓がんの原因になる。鶏卵は月に2~3回ほどならよい。」
(これも辛い。マクロビオティックへの道のり険し。)

次にさまざまな臨床データが披露されました。
驚きだったのが、エイズ患者がマクロビオティック食を摂ることで治癒されていったデータでした。
エイズの治療薬は存在しないと前置きした上で、「この食事療法で全てのエイズ患者が治るというものではないが、マクロビオティック食で治ったことは事実であり、この食事療法が人間の自然治癒力を高めることは間違いない。」と。ここがマクロビオティックの考え方の非常に重要な点の1つだと思います。
「正しい食事」を摂ることによって人間の免疫力は高まり、病魔を寄せ付けない健康な体を維持することができる。
病気とは歪んだ体の症状であり、その症状が何であれ(ウィルスによるものであれ、機能障害によるものであれ)、食事を改めることによって、体を本来の状態に戻すことが可能である、ということなのです。
そう考えたとき「癌が消えた」というデータにも納得がいくのです。

肥満、今世界中が抱える最も大きな問題の1つがこの問題です。久司先生による世界各国のそれぞれの全人口に占める高肥満度者の割合を見てまた驚きです。先進国ではアメリカがダントツの第1位でした。
普通の肥満(※BMI値26.4以上)でなく高肥満度(BMI値30以上)に属する人が男女とも全人口の40%ほどでした(演壇から遠くてはっきりした数字は読み取れませんでした)。
ミクロネシアのナウル島はなんと全人口の80%ほどが高肥満に属するそうです。
肥満は糖尿病などさまざまな合併症の誘因となりえます。原因は糖分や脂肪の多い食習慣と運動不足によるものが多いと言われます。これは年齢には関係ありません。実際、小児肥満がアメリカで大きな問題となっています。
私の友達の1人で、彼は頻繁にアメリカに行くのですが、彼が言うには「某大手ハンバーガーショップに行った時、乳児を乳母車に乗せた黒人の母親が、ドリンクバーの注ぎ口に哺乳瓶を持っていき、甘い清涼飲料水をいっぱいに入れ、赤ん坊の口に突っ込む光景を見た。あれじゃー子供を糖尿病患者に仕立て上げているようなものだ。」とあきれかえって言っていました。

ファーストフードと肥満の関連性の問題はよく取りざたされます。
これに関連する記事で、2006年10月19日、アメリカのディズニーランドが園内でのフライドポテトとソーダ類の販売を中止するという報道を耳にしました。
また、油に関しても、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸(TFA)の減量に国や自治体が躍起となっているという記事も最近多く見ます。
2006年9月28日付けの朝日新聞には、「ニューヨーク市保健精神衛生局が市内の飲食店から『トランス脂肪酸』をほぼなくす計画を発表した」と報じられておりました。
TFAの摂り過ぎは血液中の悪玉コレステロールの増加につながり心臓病の原因になると言われています。
※ BMI値 とは、世界共通の肥満度の指標で、 Body Mass Index の略です。
〔体重( kg )〕÷〔身長(m)×身長(m)〕で計算されます。標準値は 22 です。

心臓病は東欧や北欧に多いそうです。この地域は穀物があまりとれず、肉や乳製品を多く摂る食習慣があるためだということです。
血圧やコレステロール値については、数人の追跡調査によるとマクロビオティック食にすると正常値より10%は低い数値になるというデータも示されており、「これが本来の正常値なのだ」とも言っていました。
癌についても述べられました。最近増えているのが女性の乳癌、男性の前立腺癌そうだです。
乳癌は、戦前はなかった病気で、肉や牛乳やチーズなどの動物性脂肪の摂り過ぎが原因だと説明していました。これについては「陰と陽」の観点からも説明がありましたが、男女とも性を象徴する部分に癌ができることに何か科学では説明しきれないような法則があるような気がしました。
牛乳については「カルシウムが多いといわれるが本来人間が飲むべきものではない。飲むと逆に骨粗鬆症になってしまう。私などはこれまで生きてきてトータルで飲んだ量はコップ 5,6 杯ほどでしかない。」と言い切っていました。

牛乳に関しては、著書 「病気にならない生き方」(サンマーク出版) ですっかりお馴染みの 新谷弘実 氏の考えと同じでした。
余談になりますが、この本は新谷先生が大変わかりやすく詳しく書かれていますので興味のある方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
マクロビオティックとはまた少し異なる 「新谷食事健康法」 を提唱しながら、胃腸の専門医としての先生の豊富な臨床経験を活かし、確かなデータを基に書かれていますので大変説得力あり、ためになる 1 冊だと思います。お薦めです。
私は、別の著書 「胃腸は語る」(弘文堂) も読み、それに関連するビデオ(いろんな人の腸の内部が映っていました。きれいな人、汚い人いろいろです。とても怖い映像です。)も見ましたが、普段見えない体の中がいかに大切か思い知らされました。食事がいかに大切かも痛切に感じました。
人間は、具合が悪くても自分の腸の中が見えないから平気でいられるのですね。もし、自分の腸に便の詰まった状態や、ただれた状態を見たりしたら、そりゃもう恐ろしくなってすぐにでも引っ張り出して掃除したくなるでしょうし、今すぐ食習慣を改めよう!という気になるでしょう。
(私もそろそろまたあのビデオを見て反省したほうがよさそうです…)

週刊誌「アエラ」( 2006年10月16日)の中で、「食品添加物 批判者の食卓」と題して、その筋の名だたる方々(『買ってはいけない』著者:渡辺雄二、『新・食べるな、危険!』著者:小若順一、『食品の裏側』著者:安部司、『これで安心!食べ方事典』著者:阿部 絢 子)の実際の 1 週間の食事内容とコメントを紹介した記事がありました。
さすがにうるさい方々だけあって確固たる信念を持って食生活を送っていらっしゃいます。
しかしながら 100 %納得の行く食事というのは、時間的に無理があったり、手に入れにくかったりと、なかなか難しいのが現実のようです。
食事はおいしく、安全でありたいものです。
道を外れることがあっても、また戻って来られるよう確かな道を築く努力を日頃からしておくことが大切だと思います。
日々是勉強也。この日、この機会を与えてくれた方、そして久司先生に感謝です!
この体一生モノです。代替無し!大事に使わねば!

第1回 日本人とお米
第2回 五味調和をテーブルに!簡単!美味しい!山本式調理法
第3回 マクロビオティックを再認識!
第4回 “「ご飯は太る」は嘘”だそうです!
第5回 「PFCバランス」と「日本型食生活」
第6回 カロリーにこだわる!
第7回 ファーストフードの裏側
第8回 精米の原点「水車」を訪ねて
第9回 「食」は運命を左右する
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